ESSAY
研磨とは、塗装を削り取る行為でしょうか。確かに、物理的に見ればその通りです。微粒子のコンパウンドが、透明なクリア層の表面を数ミクロン単位で削り落とす。しかし私たちの仕事場では、それを「対話」と呼んでいます。
すべてのボディには個性があります。塗装の厚み、色の深み、傷の入り方。それらを見極めることなしに道具を当てることは、絶対にありません。まず手のひらで塗装面に触れ、指先で傷の深さを感じ取ります。次にデジタル膜厚計で残りのクリア量を正確に測定します。
「削れるギリギリまで削って、すべての傷を消してください」——そう言うお客様がいます。しかし私たちは「すべてを消す」ことには反対する場合があります。わずかな傷を残してでも、クリアの厚みを将来のために確保しておき、長く美しさを維持できる道を提案することもあります。
研磨の本質は「素材との対話」であり、過剰なことをしないという忍耐です。それは、凛が掲げる「何もしないという選択」の根幹でもあります。